通常、労災保険制度においては、「労働者」が仕事中にケガや病気等(業務災害)などに遭った場合、また通勤途上で事故(通勤災害)に遭った場合などに、国が被災「労働者」に保険給付を行ないますが、労働者ではないものの、「一人親方」のように実態としては労働者と同様の業務に従事されているような者も、一定の要件を満たせば特別に加入できるとしたものです。

加入条件

労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする一人親方その他の自営業者及びその事業に従事する方(一人親方等)のうち、下記の事業を行う方が特別加入できます。
極めて少ない日数に労働者を使用することがあっても差し支えありませんが、その使用日数の合計が年間100日以上と見込まれる場合には加入条件を満たさないことになりますのでご注意ください。

  • 自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業(個人タクシー業者や個人貨物運送業者など)
  • 建設の事業(大工、左官、とびの方など)
  • 漁船による水産動植物の採捕の事業(漁船に乗り組んでその事業を行う方に限ります。)
  • 林業の事業
  • 医薬品の配置販売(薬事法第30条の許可を受けて行う医薬品の配置販売業をいいます。)の事業
  • 再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等の事業

手続

一人親方としての加入要件を満たす方が特別加入する場合、「一人親方等の団体」を経由して都道府県労働局長に対して申請書を提出し、承認を受ける必要があります。
「一人親方等の団体」については、一人親方等の団体を事業主、一人親方等を労働者とみなして労災保険の適用を行なうことになります。
「浜松建設業一人親方共済組合」は、建設の事業に従事する一人親方等を労働者とみなして労災保険の適用を行なう一人親方等の団体です。

留意点(健康診断)

特別加入を希望する一人親方等で、下記の表に記載されている業務の種類に応じて、それぞれの従事期間を超えてその業務を行ったことがある一人親方については、特別加入の申請時に健康診断を受ける必要があります。

加入予定者の業務の種類 特別加入前に左記の業務に
従事した期間
実施する健康診断
粉じん作業を行う業務 3年 じん肺健康診断
振動工具使用の業務 1年 振動障害健康診断
鉛業務 6ヶ月 鉛中毒健康診断
有機溶剤業務 6ヶ月 有機溶剤中毒健康診断

加入時に健康診断の対象となる方は、指定された期間内に指示された診断実施機関で健康診断を受ける必要があります。なお、この場合の健康診断に要する費用は無料です。ただし、受診のために要した交通費は自己負担となります。

給付基礎日額とは

通常は労働基準法で言うところの平均賃金に相当する額を言います。具体的には、原則として災害が発生した日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額をその期間の総日数で除して得た額ということになります。通常の労働者の場合は給付基礎日額はこのように賃金に応じて算出することになりますが、一人親方の場合は算定の基礎となる賃金がありませんので、自分で「給付基礎日額」を決めて、労働局局長がそれを承認します。

保険料等

特別加入者の保険料については、給付基礎日額に365を乗じたもの(以下「保険料算定基礎額」)にそれぞれの事業に定められた保険料率を乗じたものとなります。
なお、年度途中において、新たに特別加入者となった場合や特別加入者でなくなった場合には、当該年度内の特別加入月数(1ヵ月未満の端数があるときは、これを1ヵ月とします。)に応じた保険料算定基礎額により保険料を算出することとなります。
下記の表の保険料は特別加入者が1年あたり国に支払う分のみを記載してあります。 実際は、下記の保険料に組合費を加算したものが費用となります。

給付基礎日額
A
保険料算定基礎額
B=A×365日
年間保険料
=保険料算定基礎額×保険料率
建設の事業の保険料率19/1000
3,500円 1,277,500円 24,263円
4,000円 1,460,000円 27,740円
5,000円 1,825,000円 34,675円
6,000円 2,190,000円 41,610円
7,000円 2,555,000円 48,545円
8,000円 2,920,000円 55,480円
9,000円 3,285,000円 62,415円
10,000円 3,650,000円 69,350円
12,000円 4,380,000円 83,220円
14,000円 5,110,000円 97,090円
16,000円 5,840,000円 110,960円
18,000円 6,570,000円 124,830円
20,000円 7,300,000円 138,700円
22,000円 8,030,000円 152,570円
24,000円 8,760,000円 166,440円
25,000円 9,125,000円 173,375円

保険給付の対象

労災保険の対象になる災害には、 仕事中における災害(業務災害)と通勤途上における災害(通勤災害)があります。原則として労働者と同じですが、 事業主としての行為によって生じた災害については対象となりません。具体的には、下記のような場合の災害につき給付が行われます。

■ 業務災害について ■

建設業における業務災害と通勤災害

業務上災害の補償については、次に該当しない場合には、被災しても保険給付を受けることができません。

  • 請負契約に直接必要な行為を行う場合(請負契約締結行為、契約前の見積り、下見等の行為を行う場合)
    請負工事現場における作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
    請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場において行う場合
    請負工事に係る機械及び製品を運搬する作業(手工具類(鋸、鉋、刷毛、こて等) 程度のものを携行して通勤する場合を除きます。)及びこれに直接附帯する行為を行う場合
    突発事故(台風、火災等)等による予定外の緊急の出勤途上

■ 通勤災害について ■

通勤災害は、文字通り通勤によって被った怪我などのことを指しますが、 この場合の「通勤」とは、就業に関して、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除くものとされていいます。 ただし、往復の経路を逸脱したり、往復を中断したりした場合には、逸脱、中断した間とその後は「通勤」とはなりません。
例えば、仕事の帰り道に一杯飲んで帰るために居酒屋に向かった場合には、居酒屋へ向かうために通常の経路からはずれた所以降、すべて通勤災害の適用とはなりません。(居酒屋の帰り道で通勤の経路に戻ったとしても適用となりません)また、軽貨物自動車運送の業務を行う一人親方の方は通勤災害の保護の対象にはなりません。